宮城大&兵庫県立大 交流会 in宮城

震災後のまちづくりを現地で学ぶ

2014年9月7日から9日にかけて、CPプログラムの協定校である宮城大学との交流会が行われました。
今回は兵庫県立大の学生と教職員が宮城を訪問し、現地の方々のご案内のもと、震災後の地域のありかたについて学びました。

1日目 石巻~南三陸町

石巻市まちなか復興マルシェ

仙台空港に到着後、甚大な被害を受けた石巻市旧市街地を通りながら、石巻市まちなか復興マルシェに向かいました。

石巻市まちなか復興マルシェは、
ここで働いてらっしゃる方々の多くは、いまも仮設住宅で暮らされています。

ここでは「笑う東北」として情報を発信されており、お店の方々の笑顔と温かさに、こちらが励まされます。
また、「人」をメインとした情報発信をされており、それによってお店の方々自身が自らの一年前を振り返ることができ、
一年前とは全く異なる成長ぶりに、自らが励まされるとのことでした。

学生たちは、おのおの仮設住宅での暮らしやコミュニティについて直接話を聞いたり、
当地の美味しいものを昼食にとるなどしました。

南三陸ポータルセンター・さんさん商店街

続いて向かったのは「南三陸ポータルセンター」。ここは、地域住民による新たな交流の拠点として南三陸町観光協会が運営しており、地区の集会や会議などで多目的に利用されています。

その一角に、「南三陸復興まちづくり情報センター」があります。ここでは、南三陸町における復興まちづくりの概要や、その進歩状況がわかるパネル、町の完成予想模型などが展示されています。
ここで、震災後の土地利用計画や、それに伴うまちづくり・コミュニティ創出のあり方等について、宮城大学の平岡教授からお話を伺いました。

たとえば高台移転では、移転計画が具体化する中で、現在の仮設住宅でできたコミュニティ、旧市街によるコミュニティと全く異なる、高台移転先でのコミュニティの創出について、地元住民の方々が不安に感じてらっしゃる現状があります。また、震災直後の住民の意向とは異なり、高台移転を望む住民が減少している傾向があるそうです。

その後、南三陸さんさん商店街の視察を行いました。
この商店街は、2012年2月に宮城県南三陸町の志津川地区にオープンした仮設商店街で、 復興をになう地元の事業者が軒を連ねています。

商店街には、チリ共和国のイースター島より贈られた、本物のモアイ像が飾られています。
モアイ像は、イースター島の石で地元の職人が作り上げたもので、精霊を込めるという想いから目が付けられています。
イースター島から本物のモアイ像が贈られたのは世界初であり、目がついているものはほとんどないそうです。

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ポータルセンターにて

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情報センターにて移転計画等の説明を受ける

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さんさん商店街の散策

志津川中学校・南三陸防災庁舎

復興まちづくり情報センターで説明を受けた、町全体の被害の様子や、移転計画の状況について、
高台にある志津川中学校より実際の場所を臨みました。

造成が既に始まっている高台の様子も見られましたが、宮城大の平岡教授いわく、旧市街と移転先となる高台の町との道路の動線計画等、未確定な部分が多いとのことでした。

その後、バスを走らせ南三陸町防災庁舎へ。
防災庁舎は以前、震災遺構の保存に対する町の負担や、復興事業への支障を考慮し、解体が予定されていました。
しかし、復興庁や宮城県が震災遺構の保存に対する支援を表明し、現在は未確定の状態です。
3年経った現在も、ほとんど骨組みだけとなった庁舎の献花台には、花が途絶えないようでした。

志津川まちづくり協議会 工藤真弓さんのレクチャー

空も暗くなってきたころ、志津川の上山八幡宮さまをお訪ねしました。

禰宜でおられる工藤真弓さんは、志津川まちづくり協議会に所属され、復興のまちづくりにまい進されてらっしゃいます。
志津川まちづくり協議会では、住民の防災集団移転促進事業や、被災した市街地を復興するための土地区画整理事業の進め方など、今後のまちづくりに向けて必要な事柄の方向性を協議されています。

たとえば、防潮堤のありかたです。
防潮堤の再構築にあたり、全体計画としてすでに提示された高さを変えることは難しいが、
まちを愛する原点となる「磯の体験」をこれからの子ども達にも残したい。
そのために、防潮堤のセットバックを提案したり、
安全を確保するために護岸から川辺への階段の設置の提案を行うなど、
行政と連携した市民の目からのまちづくりに、精力的に取り組んでらっしゃいます。

工藤さんは、
強い生命力をもち、大津波の中を生き抜いた椿を復興のモチーフとした、「南三陸椿復興ものがたり」など、
新たなまちの魅力づくりにも取り組んでらっしゃいます。
素晴らしいアイディア、柔軟性と高い行動力で活躍されている工藤さんは、
これからCPを目指す学生に、たいへん大きな示唆を与えてくださいました。

「校舎の宿 さんさん館」でのワークショップ

その後、本日の宿所である「校舎の宿 さんさん館」へ。
廃校となった木造校舎を活用したこのお宿は、とても味のある外観で、中はきれいに整備されています。

夕食後、まちづくり協議会等で活躍されている、地元の若手活動家の方々を囲み、ワークショップを行いました。
そのうちのお一人は、「南三陸deお買い物」の店長であり、かつ「南三陸おらほの学園祭実行委員長」を務めてらっしゃる伊藤孝浩さん。伊藤さんの震災前後の生き方の変化や、「南三陸deお買い物」の立ち上げ経緯と現状、「南三陸おらほの学園祭」に望む町への思いなどを語って頂き、学生からの質問も多くなされました。

特に、「人」を通じて、「本質的にまちの魅力を高める」ことを目的とし行っている「南三陸おらほの学園祭」には、学生も共感したようです。
364日の日常のための1日の祭の役割とは、そのための継続的な情報発信の重要性、といったCPにとって重要なヒントが多く示されました。

若手として活動される方々に身近に接して、まちに住み続けること、まちを愛すること、これからのまちを魅力的にすることの難しさなどを、ありありと感じ取られる機会となりました。

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町議会議員さんの取り組みに興味津々の学生たち

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地元の若者との熱い議論

2日目 鳴子温泉~大崎市

鳴子温泉 伝統文化を活かしたまちづくり

2日目は、まず宮城大学の宮原教授のご案内のもと、鳴子温泉街を訪れました。

最初に向かったのは旅館「大沼」。「大沼」の五代目湯守でいらっしゃる大沼伸治さんは、
古くから伝わる温泉文化「湯治」を、新たに”TOJI”として広める取り組みをされていらっしゃいます。

大沼さんいわく、湯治は、「自然の一部である人間が、温泉という大自然に浴する(入浴)ことで大地の力をいただき、
本来の自分を取り戻すこと」。
大量に食べて、好きなだけ飲んで、寝る。
本来の温泉は、こうしたマスツーリズム化した現代の温泉旅行とは、異なった意義をもっているとのこと。
TOJIは、「ハレ」としての温泉療養ではなく、
「ケ」にプラスアルファした休養・保養・療養としての温泉を提供し、
忙しなく変化する現代の人々に、命の居場所=「場」を創生する取り組みです。

大沼さんはまた、「東鳴子ゆめ会議」を発足させ、アート・農業・食等様々な分野での新しい取組も行ってらっしゃいます。
今の時代に合わせ、地域の伝統文化を魅力的に塗り替える大沼さんのアイディアと行動力に触れ、
CPをめざす学生たちも豊かな示唆を得られたようでした。

その後は鳴子温泉街を視察。
震災後に来客が減少する中、観光ボランティアガイドを充実化したり、
下駄の形をした手形を用いた協賛店でのサービスの充実を図られてらっしゃいます。
この下駄手形は、杉の間伐材を利用し、地元の福祉施設との連携で作成されています。
学生はおのおの足湯に手足を浸けたりして、日本の温泉の11泉質のうち10泉質を有する鳴子温泉を味わっていました。

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優しい語り口調の大沼さん

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足湯を体験

醸室~古川中心市街地

続いて訪れたのは、大崎市。
まずは醸室(かむろ)にて、大崎市のコミュニティづくりについてのレクチャーを受けました。
醸室は、「みちのくのをだえの橋の・・・」の枕歌で有名な緒絶橋のたもとに建つ、
江戸時代後期建造の橋平酒造店の酒蔵を、国や県・市の協力を得て改修した商業施設です。

はじめに、宮城大学風見正三教授より大崎市の概要について伺い、
その後、NPO法人「おおさき地域創造研究会」事務局長・小玉順子さんより、
人とひとが温かくつながり支え合う地域を目指した活動について、ご説明を頂きました。

若者がまちからいなくなること、外部との接点が希薄になりつつあることなど、コミュニティは様々な問題を抱えています。
こうした問題を解決するために様々な取り組みを行われており、その活動の一つが「大崎まちかどコンシェルジュ」です。「発酵食を食べ歩き」コースや、「鳴子こけしを絵付けして自分と向き合う」コースなど、様々なコースをまちを案内するコンシェルジュ。
コンシェルジュと一緒に歩き、外からのお客さんや地元の方にまちを知り、楽しんでもらおうという企画です。お客さんだけでなく、お店やコンシェルジュを含む3者が元気になることを目指されており、コンシェルジュの育成にも力を注いでらっしゃいます。

その後、
川端チーム・裏街・チーム・若者チームの3つのチームに分かれ、実際にまちかどコンシェルジュの方々に案内していただき、古川中心市街地を散策しました。

若者チームでは、「高齢化が進む商店街と若者をつなぐ役割を担いたい」という想いのもと、Café Avain を立ち上げた大学生の方のお話を伺いました。
カフェの運営は市からの補助金で賄われており、総数15名程が交代で営業されています。
カフェでは、新聞を読んで気になった記事を切り出す「新聞ワークショップ」や、大きなスクリーンで行う「ゲーム大会」など、様々な取り組みも行っておられるとのことでした。

大学生のため、開店時間や他団体との会議の調整等にあたって時間的制約があったり、
「若者に何ができるのか」といって理解が得られない場合も多いなど、様々な障害もあるとのことでしたが、
地元を元気にしたい、という熱い想いは確かに伝わってきました。
同世代の若者が懸命に取り組む姿に、刺激を受けた学生も多かったようです。

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古川まちあるき

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若者の取り組みに注目

初体験!農場に泊まる

今日の宿所は、宮城大学食産業学部付属の「坪沼農場」。
坪沼農場は、約31.4haの広い敷地を有する宮城大学の実習地で、豊かな自然に囲まれたロケーションです。

宮城大学の教職員の方々や学生さん達が、
農場でとれた農産物やお肉、牛乳、そしてそれらを用いたデザートまで、
新鮮な手作りのごちそうを用意してくださいました。

兵庫県立大の学生も、ミニトマトの収穫体験や牛の乳搾り体験を楽しみました。
中には、ミニトマトを収穫しながら食べたり、両手いっぱいのトマトを収穫する学生たちの姿も・・・。

宮城大学・西垣克学長からごあいさつをいただき、交流会がスタート。
総勢38名の宮城大学の教職員の方々、学生さん達が、真心をこめておもてなしくださいました。
たくさんの量の新鮮な野菜、お肉、ごはん、デザートに心もお腹もいっぱいになりました。
最後には大竹農場長からのごあいさつをいただき、食を通した交流も各所で見られました。

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たくさんのご馳走、ありがとうございました!

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色とりどりのとれたて野菜!

3日目 名取市閖上~岩沼千年希望の丘~神戸へ

ついに最終日、3日目です。

震災の大津波によりたいへん大きな被害を受けられた名取市閖上地区を訪れたのち、
岩沼市の「千年希望の丘」へ。
「千年希望の丘」とは、震災によって発生した瓦礫を再生利用して盛土をし、そこに植樹をして造成される丘です。
希望の丘をつなぐ部分には、様々な樹木を植栽して「緑の堤防」とし、自然と共生する丘が目指されています。
千年先まで、今回の大津波の出来事とひとびとの思いを後世に伝承していけるよう、「大震災を伝える丘」としての祈りが込められています。

CP概論を受講している若い学生たちには、震災の記憶を学び伝え、
将来のまちづくりに活かしていくことが求められています。

神戸空港に帰り、平田富士夫教授からの総括がありました。
交流会を終えた学生たちに、
CP育成プログラムの意義を再認識してもらうとともに、
3日間で得た経験をコミュニティ・プランナーとしての一層の成長につなげていってほしいという激励の言葉が語られました。

宮城の関係者の方々のご尽力により、
今回の交流会は無事に遂行されたとともに、多くの学びを得られた会となりました。
本当にありがとうございました。